- 日本の色めぐり とは
- この連載は、美しい自然の色を見るといてもたってもいられないニュアラ代表の松本奈月が、古くから天然染料の染色文化がある日本各地を訪れ、すばらしい伝統を重んじつつ、古典的なイメージの天然染色を現代的に再編集したプロダクトを送り出し盛り上げるために始まりました。
現地で取材・体験した知られざる伝統染色の世界を、もっと身近に、旅行に行ったみたいにカジュアルに奥深くご紹介します。
vol.1 徳島の藍染
今回のテーマは、「徳島の藍染」です!
藍染=渋い・絞り染め・職人・和風
そんなイメージがありますが、
藍の青には、余計な装飾はいらない、
他の染料にはないすっきりとしたシンプルな潔さを感じます。
青単一でも魅了される独特の色の深さ、
この特別な「青」はどうやって生まれるのか。
徳島県の「Watanabe’s」を訪れました。
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藍師・染師の渡邉健太さんは、世界的に活躍する徳島の藍染ユニット『BUAISOU』発起人であり、2018年からは独立し、藍染工房「Watanabes(ワタナベズ)」を立ち上げた。
藍師・染師の渡邉健太さん
わたしが滞在していた数時間でも、渡邊さんを訪れる老若男女が何人もおり、地域で人気者のおにいさんという出立ち。
先のお客さんが帰られるまで対応してくれた若いスタッフの方に、
タデ藍の種まきから収穫、すくも造り、染色までの工程をわかりやすくご説明頂きました。
トークが軽快でおもしろくて分かりやすく、楽しくて心地いい時間。
左に見えるカウンターにイスを出してくださり色々と伺った。
お話を伺って驚いたのが、
阿波の藍の作付面積は最盛期には15,000ヘクタールほどあったものが、少し前にはたった4ヘクタールまで減少したこと。
現在は20ヘクタールまで戻ったものの、存続は極めて難しい状況だそうだ。
分業制が主流であった藍染業においては、
藍を育てる人、蒅(すくも)を作る人、反物を作る人、染める人、売る人、と製品になるまでの工程に関わる人が多いため、最終価格が高くなってしまう。
特に藍を育てる人、蒅(すくも)を作る人は手間暇かかる割に利益が少なく、専業では持続が難しく、あきらめてしまった製造者も多いとのこと。
更に驚くことに、蒅(すくも)の値段はなんと40年前からずっと変わってないので、
藍の生産だけでは暮らしていくことが難しく、生産者は減少の一途となった。
渡邊さんは、中間業者を入れることなく、自社で
藍の栽培から蒅(すくも)作り、染めまで一貫して行うことで、
持続可能な商いと、地域への貢献に挑戦している。
「肥料食い」と言われている蓼藍(たであい)。
ご近所の養豚場から堆肥をいただいて藍の栽培に生かしている。
いかにも養分たっぷりな、畑の土の黒さが印象的でした。
「藍染めはほぼ農業!染色は最後の最後の工程」とおしゃっていました
藍の種を蒔いて、育てて、
収穫して、
葉っぱと茎を分けて、
その葉っぱを乾燥させる。夏に収穫した乾燥した葉っぱに水を満遍なく打ち、かき混ぜる。そうすると自然と熱発酵を始め、ピーク時には75℃近くにも達する。水と空気が足りなくなった頃合いを見てはこの作業を行うこと約120日。物凄い労力をつぎこんだスクモ藍
スクモ藍に、木灰汁、貝灰、ふすまを入れ、天然発酵させ、
いい藍の染色液に育てていく。
スクモ藍も染色液も菌がメインとなっている。
まさに「生き物」そのもので、毎日変化する菌がすごしやすいように、
phや温度、たまにご飯(ふすまやお酒)などを与えて世話をし、
大切にたいせつに何ヶ月も使っていきます。
藍の液を入れる樽。
「俺の孫の世代にこいつが生きてくる!(天然素材だと菌が育つから)」
とおっしゃっていました。
そういうの考え方ってこのごろのビジネスではあまりお目にかからなくてかっこいい!
アトリエ内の薪ストーブの薪は配達がてらわけてもらい、冬場は室内の暖房に、焼け残った灰は藍の染料をアルカリ性に保つ為にも使用される。
伺った時はちょうど植え付けの時期で、よく育った苗を景気良くおみやげにいただきました!
Watanabe’sでは、
衣類などのオリジナル商品の販売のほか、
アパレルブランドとのコラボレーション、
大河ドラマでの藍のシーンの監修、
藍染めのOEMや地域の小学校での藍染め体験などをされています。
Watanabe’s
〒771-1350 徳島県板野郡上板町瀬部314番地10
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ニュアラでは、2021年9月1日〜20日まで、
「Watanabe’s別注 花浅葱 はなあさぎ」
「 Watanabe’s別注 青藍 せいらん」の受注オーダーを受け付けています。
こだわった土で育てた『Watanabe’s』の藍色は、濁った感じがなくて彩度が高く、キリッとした青色に仕上がっています。